(いなづみ)
【民俗】〈農業〉
脱穀後の稲ワラを積み上げておくもの。元来は刈り取った稲を積み上げておくものであった。呼称を大別すると、ニゴ(ニオ、ニヨ)系とスズミ(ツヅミ)系に分けられる。円筒形や箱形にワラを積み上げて整え、ニオブタなどと呼ばれる屋根状の部分をのせる。しばらくは田にそのまま積んでおき、時期をみてワラ小屋や自家の屋根裏などに運んだ。春になると屋敷地近くまで移動させて作り直す家もあり、田のスズミをコスズミ、屋敷地に積み直したものをオオスズミと呼んで区別することもあった。稲ワラは生活必需品であり、縄などの生活用品のほか、牛の飼料や燃料に使うため、夜露や雨で台無しにしないよう気を使った。また、ニゴといえば山草を積んだものを指す地区も多く、山草を積んだものを単にニゴ、稲ワラのものはワラニゴと区別した。現在は、稲ワラの用途が減り、脱穀機を兼ねた稲刈り機が普及したため、稲積はあまりみられなくなってきている。〈農業〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻158ページ、16巻97ページ