亥の子

 

(いのこ)

【民俗】〈年中行事〉

旧暦の10月の亥の日に行われる収穫を祝う行事で、稲作のみならず、畑作儀礼の要素もある。市域では山間部のみに分布し、豊作や健康を祈願してボタモチやダンゴを作り、稲株を入れたワラツトなどと供えた。供えるボタモチには蒸して潰した里芋を混ぜることがあり、これをイノコボタモチと呼ぶこともあった。田津原(旭地区)では、升に一杯になるような大きなボタモチを作って仏壇に供え、また、小さなものを12個作って重箱に並べ、その上に普通の大きさのボタモチをのせた。稲刈り後の稲株を、所有する田の数だけ一株ずつ取ってきて新藁のワラツトに収め、山にある亥の神様の石碑に祀った(写真)。ここに重箱から普通の大きさのボタモチを出して供え、来年の豊作を祈り、小さなものは全部食べて帰ってきた。連谷(足助地区)では農作業で殺生したミミズやカワズ(蛙)を供養するものだといわれた。この日には、その年で初めてユルリ(囲炉裏)に火を入れた。〈年中行事〉


『新修豊田市史』関係箇所:15巻751ページ