(イノシシ)
【民俗】〈農業〉
身近な野生動物だが、市域では民俗的な動物としての伝承は希薄であった。生業と山とが密接であった時代、多くの人は割木作りや炭焼きといった山仕事をしていたが、日中はイノシシをはじめとする大型哺乳類をみかけることはなく、植林山にはイノシシが来なかったという。一方で、近年はその生息域の拡大は顕著であり、山間部全域から平野部の市街地との境まで進出している。平成期以降では、田畑を荒らすため困っているという話が多くなり、はっきりと害獣として認識されるようになった。「イノシシは何でも食べる」とされ、雑食性の上、強い力で地面を掘り返すため、農作物や田の畔、用水路への顕著な被害が報告されるようになっている。かつてはテッポウウチと呼ばれる猟師がイノシシ猟をしていたが、次第に行われなくなったことも生息数増加の一因であろう。対策として電気柵や金網を設置したり、コヌカを餌にしたイノシシ牢を置いたりしている。〈農業〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻110ページ