(うんぱんぐ)
【民俗】〈環境〉
運搬手段には人力運搬、畜力運搬、動力運搬があるが、その利用では地形によって違いがみられた。市域の平地や山間盆地ではテンビンボウ、ニナイボウなどと呼ばれる天秤棒の両側に桶、籠、ビク、モッコを吊り下げて搬送する肩負い具が人力運搬具としてよく使われた。人力運搬具としては多くの荷を運ぶことができたが、急坂の多い山地ではあまり利用できなかった。ここではショイコ、インガなどと呼ばれる背負い具に稲麦、柴草、薪炭などを縛り付けて運んだ。畜力運搬では、平坦地は馬力のある荷馬や馬車馬が活躍したが、山地は坂道に強い牛が活躍した。動力運搬時代にはいっても、平地山地の違いがその発展過程に大きく影響した。平地では馬車に替わってバス、鉄道、トラックが輸送の主流になるのは大正の頃からであるのに対し、道路整備の遅れた山地では昭和30年代以降というところが多く、山地の運搬手段は長い間人力、畜力に頼らなければならなかったのである。〈環境〉
『新修豊田市史』関係箇所:17巻251ページ