(おくわさん)
【民俗】〈年中行事〉
下山地区や足助地区、旭地区などの市域の山間部で穀物の豊作を願って行われてきた行事。お鍬さんは農耕の神様であるとされる。下佐切(足助地区)では「お鍬さんは山の神様と同じであり、春に山から畑においでてお鍬さんとなり、秋は山へおいでて山の神となる」と伝えられ、春分の日あたりに神事が行われた。ほかの地区では主に田植え前の春の時期に行事が行われたが、秋などの場合もあった。旭八幡(旭地区)では20年に一度ぐらいの周期で実施された。下山地区では、木の枝などで鍬をかたどったものをご神体とし、これを神輿に載せて担ぎ、田畑の中を練り歩いた。このとき「お鍬さんは豊作だ、300年でござった」(下山地区東大林)、「お鍬さんの豊年じゃ」(足助地区綾渡)などと歌った。羽布(下山地区)では、「お鍬さんがござった。300年の豊作だ」と歌いながら神輿を担ぎ、神輿を地面に叩きつけることで田畑に力を与えるとされた。〈年中行事〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻717ページ、17巻643ページ