(おけ)
【民俗】〈諸職〉
桶には酒や味噌の醸造用の巨大な桶から、風呂桶、お櫃・盥、小さい手桶までさまざまな種類があり、大きさも用途もいろいろであった。細長い板をガワイタ(側板)といい、スギやサワラ、ヒノキなどが用いられた。桶作りには鉈、ヨキ(斧)、鋸、錐、鉋、槍鉋などを用いたが、木材を密着させて組むための削る作業が重要だったことから、側板の湾曲の仕上げのためのセン、側板同士の接着面の加工に用いた台の長い鉋のショウジキ、桶の底板を嵌めるために側板に細い溝を削る鉋など、専門の道具が準備された。連結した側板は、マダケ(真竹)で作ったタガ(箍)にシメギという木製の当て具を当て、キヅチ(木槌)で叩いて緩まないように締めた。昭和30年代の挙母のマチの桶屋では、子どもの誕生祝いに紅白の餅や赤飯を詰めたお櫃、風呂桶の注文が多かったという。桶の修理も大切な仕事で、市域平地部では、肥料となる屎尿を運ぶ肥桶(ションボケ)の修理依頼が多かったという。〈諸職〉
『新修豊田市史』関係箇所:16巻159ページ