加塩神社舞台

 

(かしおじんじゃぶたい)

【建築】

加塩町(旭地区)。加塩神社の境内は、山麓にあるため、平坦地は少なく東西に細長い。舞台は本殿に向かって左側に位置する。この舞台の建立年代は、木札によれば、明治26(1893)年に嵐桂子大一座が杮落の芝居公演を行っており、この公演の直前に完成していたとみられる。その後、棟札によれば昭和48(1973)年8月31日に屋根改造が行われ、茅葺から現在の屋根に改造されたとみられる。現舞台は、木造平家建て、切妻造、カラー鉄板葺で、その四周に1段低い庇が取り付けられているが、もとは入母屋造、茅葺、平入の建物であった。建物規模は、桁行12.14m、梁間9.1m、床高0.843mである。建物正面には、長大な虹梁が架けられ、両袖の太夫座には小型の格子窓が開けられている。両側面では、太夫座奥の柱間にそれぞれ、幅4.6m、高さ上手2.4m、下手1.8mの床面拡張装置(ガンドウ)が設けられている。背面の中央柱間には遠見が造られる。舞台内部の回り舞台は、盆の直径が6.7mで、奈落に立てられた心棒の上に支点をつくって、盆を回転させる皿回し方式である。その他にも、せり上がり用の切穴が3か所確認できる。舞台下手奥の隅部には、2層に分かれた小部屋が造られているが、下は化粧部屋、上は床山として使われた。また、舞台後半部の上部には、中二階が造られ、楽屋として用いられた。この舞台は、旭地区では大規模で、回り舞台、太夫座、ガンドウ、せり、化粧部屋、床山、楽屋、遠見などの舞台機構も充実し、同地区内では代表的な舞台建築であるといえる。


『新修豊田市史』関係箇所:22巻451ページ