(かせんそうだつ)
【自然】
河谷は小さな流れから徐々に大きな流れへと成長していくという河食輪廻説(地形学のモデル)に従えば、形成されてからの年月が経過した古い河谷であればあるほど、谷幅は広く河谷の延長も長くなるとされ、その形態は段階的に幼年期から壮年期を経て老年期に至るとされている。ところが、侵食基準面からの高さや侵食力の異なる河川が途中から合流すること、例えばある程度古くて長く幅の広い河川の途中に、まだ新しく細い河川の谷頭が侵食(谷頭侵食)により接することによって、古い谷の上流部を争奪し、結果として上流は長く幅が広いが、途中から狭く切り込んだ谷となるような、河谷の成長モデルに合わない河川を形成する。一方争奪された河川も谷幅が広く緩やかなのに、上流側が争奪され突然なくなっている無能河川となる。このような河川の争奪現象を河川争奪と呼ぶ。東京都世田谷区の谷沢川が九品仏川の上流を争奪した等々力渓谷などが有名である。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻51ページ