(カタクリ)
【自然】
春の訪れを象徴する草本種で、可憐な姿から「春の女王」と呼ばれる。別に「スプリングエフェメラル」と呼称されるが、これは「春の儚きもの」という意味である。早春期の短い命をたとえたのであろう。明るい落葉広葉樹林の林床、森際、草地に生育し、早春期地下の鱗茎から茎を地上に伸ばし、繁殖と1年分の光合成を済ませ、 他の植物が芽吹く頃には翌春を待って地下で過ごす。斜面斜度に応じ花の向きを調整し、クマバチ、マルハナバチ等のハナバチ類、スジグロシロチョウ、ギフチョウ等のチョウの仲間を誘う。種子にエライオソームと呼ばれる器官があり、これをアリが好み、運搬するので分布様式「アリ散布型」の繁殖生態を持ち、種子定着から開花まで7年以上を要する。希に白花があり、「幸運の花」といわれている。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻361・611ページ