(かまどうぐ)
【考古】
焼物を焼成するために窯詰する際、器物を安定させたり、降灰や釉薬による融着を防ぐために使用された道具。古代・中世に多用された窖窯は窯床が傾斜しているので、壺・瓶類等の器物を床に並べるときには何らかの支えが必要であった。須恵器生産の段階では、器物の一部を切り取ったものや、小石・破損品の破片等が用いられ、稀に裾開きの円筒形のものが用いられていたにすぎなかったが、平安時代初頭に灰釉陶器生産が始まったのに伴って、定形化した窯道具が出現した。支脚として粘土を棒状にした「つく」やコップ状(写真後列:七曲1号窯出土)あるいは粘土棒を輪にした「輪つく」などである。また施釉陶器の生産が始まると重ね焼きによる融着を防ぐための三叉・四叉等の「とちん」(写真前列:七曲1号窯出土)や「より輪」、降灰を防ぐための「さや」類も登場した。さらに灰釉陶器窯では、窯内の焔を均一にするために、棒に粘土を巻付けた棒状・三角錐状の分焔棒が置かれることもあった。10世紀に入ると椀皿類の量産化のために「つく」類に変わって窯床に焼台(粘土塊)を隙間なく配置し、その上に椀皿類を重ね置く方式が採用されるようになった。さらに戦国期の美濃・瀬戸大窯や近世の連房式登窯では、施釉陶器を量産するために匣鉢が多用されるとともに、その匣鉢に器物をより多く収めるため、融着防止用に「とちん」に代って、「ピン」・「ハリ」と称される窯道具が作られ多用された。
→ 窯跡、猿投山西南麓古窯跡群