紙屋鈴木家旧蔵屏風絵(豊田市蔵)

 

(かみやすずきけきゅうぞうびょうぶえ)

【美術・工芸】

足助町の有力商人紙屋鈴木家に伝存した屏風絵群である。鈴木家に入った経緯は不明であるが、それぞれ当家にふさわしい内容をもっている。尾張藩御用絵師で狩野派の清野一幸(?~1695)の竜虎図屏風は、その画系の権威や画題のいずれも、名家にふさわしいものである。英一蝶(1692~1724)作と考えられる四季風俗図(四民図)屏風(写真)は、為政者が民の労苦をしのぶための教訓的な意味を持つ画題であり、足助における鈴木家の立場を暗示してくれる。源氏物語図屏風などは、江戸後期の地方における都の雅な文化に対する素直な憧れを示すものである。東海道図屏風は、旅や街道を主題にした作品が諸分野で増えてきた江戸時代後期という時代性を反映する資料である。名前の明らかな画家のうち、京都で活躍した生川九春(生没年未詳)の作は3点が含まれる。鈴木家が茶の湯や香道で京都と深いつながりのできたことが、制作につながったと考えられる。


『新修豊田市史』関係箇所:21巻204ページ、11号27ページ

→ 生川九春