(カモシカ)
【自然】
偶蹄目、ウシ科。国の特別天然記念物(1955年指定)。雌雄ともに黒い角がある。目の下に眼下腺があり、蹄の間には蹄間腺がある。歯式は0・0・3・3/3・1・3・3=32。日本固有種で本州、四国、九州に分布する。草や落葉広葉樹の葉を基本的な食物としている。ウシと同様に複数の胃を持ち、反芻する。秋(9月~11月頃)に交尾し、翌年春(4月~6月頃)に1頭出産する。通常は単独で生活するが、母親と当年生まれの子、ないし母親と当年と前年生まれの子との組み合わせで複数頭が生活することもある。成体はそれぞれが単独のなわばりをもち、眼下線からの分泌物を木の幹などにこすりつけてなわばりのサインとしている。なわばりの内部には休息したり反芻したりするために岩場などの見晴らしの良い場所を持っている。好奇心の強い性格をもともと持っていて、山中で出会ってもこちらをみて動かないことがよくある。こうしたもともとの性質と厳重な保護政策によって、市内でも近年分布を広げた個体が平地の民家の周辺においても目撃されるようになっている。近年における分布の拡大は厳重な保護政策によるものだけではなく、暖冬化による子の冬季の死亡率の減少と子が親のなわばりから追い出されることや、ニホンジカによって生息場所の餌環境が悪化していることも関係している可能性がある。市内では高橋、猿投、石野、松平、藤岡、小原、足助、下山(写真)、旭、稲武の10地区で生息が確認されている。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻592ページ