環境保全型農業

 

(かんきょうほぜんがたのうぎょう)

【現代】

「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和等に留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」を指す。政府は、平成11(1999)年制定の「食料・農業・農村基本法」で「農業の持続的な発展」を掲げ、「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(持続農業法)」の制定・施行によって、堆肥による土づくりと化学肥料・農薬の使用低減技術を導入する農家をエコファーマーと認定して、環境保全型農業の導入を促してきた。豊田市のエコファーマーは、平成13年の1戸から平成15年度末に96戸、平成19年度末に200戸へ拡大した。その後、平成27年に614の農業経営体(全体の23.2%)が環境に優しい農業を行い、その85.7%が農薬の使用量を減少させていた(化学肥料低減54.1%、堆肥による土作り39.6%)。このように、豊田市における環境保全型農業への取り組みは、主に減農薬栽培から進められた。水稲作では、高岡地区の中甲や若竹という農業生産組織が病気に強い抵抗性品種を導入し、適期防除を徹底したことで防除回数を減少させ、果樹作では交信攪乱によって交尾を防ぐ、性フェロモン剤が、平成14年から上郷地区福受の梨栽培と猿投地区の桃栽培全体に導入され、害虫の発生密度を低下させた。他方、茶栽培では、藤岡地区や下山地区の茶園で、高い標高を活かして減農薬栽培や無農薬栽培、さらに平成6年から有機栽培が一部で行われ、平地の茶園でも農薬の使用回数が整枝などの栽培技術の工夫によって大幅に減少した。また、環境保全型農業の展開は、農業生産工程を記録して点検・評価しながら農業経営を行う、愛知県版GAPの取り組みによっても支えられてきた。この結果、豊田市では、中甲(平成7年度)、あいち豊田農協の梨部会(平成19年度)と桃部会(平成28年度)が環境保全型農業推進コンクールで受賞の栄誉に浴することとなった。

『新修豊田市史』関係箇所:5巻577・729・739ページ

→ 農業生産工程管理(GAP)