(きたたいへいようこうきあつ)
【自然】
北太平洋高気圧は、ユーラシア大陸の対流圏上層部(200hPa等圧面高度)に形成される南アジア高気圧(チベット高気圧)に対し、東アジアの夏型気圧配置を代表する海洋性気団で、ハドレー循環の下降気流域に形成される対流圏中層部(500hPa等圧面高度)の高気圧であり、中緯度高圧帯に類するものである。ハドレー循環の上昇気流域は、北半球の北東貿易風と南半球からの南東貿易風との収束帯にあたり、貿易風の収束帯は海洋上ではSITC(南熱帯内収束)とNITC(北熱帯内収束)に分けられるが、北半球が夏季になると南半球からの南東貿易風が赤道を越え、南西風に変化して北半球で北東貿易風と収束してNITCを形成し、上昇気流域となる。このため、下降気流域にあたる北太平洋高気圧の中心が北上して季節進行とともに領域が拡大し、その張り出し方で日本列島の夏型気圧配置が決定する。すなわち、日本列島全体が北太平洋高気圧に覆われる「全面高気圧型」、主に日本列島の東側を中心に南北に張り出す「東高西低型」、および北日本は温帯低気圧や前線が停滞するものの、西日本が北太平洋高気圧に覆われる「南高北低型」、さらに、西に張り出す北太平洋高気圧の先端が北西に張り出す「鯨の尾型」に分類される。東海地方に酷暑をもたらすのは全面高気圧が全国的であるのに対し、南高北低型、および鯨の尾型である。近年の地球温暖化に伴って、ユーラシア大陸の対流圏上層に形成される南アジア高気圧の勢力が拡大し、東アジア上空にまで張り出すようになった。その結果、中層の北太平洋高気圧と鉛直的に合体し、乾燥断熱効果によって猛暑日(日最高気温35℃以上)の出現日数が増している。特に鯨の尾型は、高気圧に沿って北西の風がフェーン現象によって多治見や瀬戸、豊田、岡崎等の三河山間部に沿う盆地的要素を持つ都市に押し付けられ、気温が40℃以上に達することも多くなった。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻91・123・126・129・136・142・145・153・156・158・161・165ページ