きのこの形態

 

(きのこのけいたい)

【自然】

きのこの形はシイタケやマツタケのように、傘と柄からなるきのこを思い浮かべることが多いが、キクラゲ類のように不定形のきのこや、サルノコシカケ類のように柄のないきのこなどさまざまな形をしている。見慣れた傘と柄のあるきのこでも、傘の裏はヒダ、小さな穴、針状などさまざまである。また、全体の形は球形をした、茶碗のような形をしたチャダイゴケの仲間、仏具の三鈷に似た形をしたサンコタケ、蟹の鋏を思わせるカニノツメ、イカが足を上にしたような形のイカタケ、サッカーボールの模様のようなカゴタケなど面白い形のものがあるが、発生数は少ない。大きさもさまざまで、オニフスベは、バレーボールほどの大きさの球形になり、傘の径が30cm を超えるほど成長するニセアシベニイグチやカラカサタケ、1株が抱えきれないくらい肥大するヒラタケ等大きなきのこがある一方、小さなものでは、ビョウタケは大きなものでも傘の径、高さともは3mm程度、ヒメロクショウグサレキンは柄がなく、径2mmほどの円盤状のきのこである。きのこの色は褐色と白色のものが大部分だが、ベニテングタケ(写真)のように赤いもののほか、紫色のムラサキシメジ、黒いオニイグチモドキ、青いソライロタケ、緑のクサイロハツなどさまざまな色のきのこがある。また、傘の表と裏で色が異なるものや同じ色をしているものなどさまざまである。きのこには少しカビ臭く埃っぽい臭いがある。きのこの臭いは特に強いものではないが、中にはマツタケのように独特の強い臭いのするきのこがある。他に、桜餅の臭いのするアオイヌシメジ、ニッキの臭いのサケバタケ、カブトムシの臭いのするニオイコベニタケ、カレー臭のニオイワチチタケがある。また、ニオイドクツルタケはカルキ臭が、ハタシメジは蜜柑の臭いがある。不快な臭いを発するのはスッポンタケ科やアカカゴタケ科のきのこで、グレバと呼ばれる粘性のある物質を持ち、この中に胞子が含まれている。スッポンタケでは傘に相当する部分の表面にグレバが含まれる。臭いは強い糞臭で、ハエを集め胞子の拡散をしている。イチジクやタンポポを傷つけると乳白色の液を分泌するように、きのこにも傷つくと液を分泌するものがある。ベニタケ科チチタケ属に分類されるきのこで、各地で発生するハツタケは暗赤色の液が滲む程度に、チチタケやツチカブリは少し傷ついただけで、乳白色の液が何滴も滴る。液は空気に触れると変色するものがあり、クロハツは最初に赤くなるがやがて黒く変わる。ヒロハチャチチタケは赤褐色に、トビチャチチタケは薄紫に変色する。また、傷つくことで色の変わるきのこがある。きのこの乾き具合や成熟度によって異なるが、触っただけでその部分が直ちに変色する。ソライロタケは青から黄色に、アカヤマタケは赤色から黒く、アワタケは傘の裏が黄色から青に変色する。このほか徐々に色が変化するきのこも多く、種の見分ける点になっている。


『新修豊田市史』関係箇所:23巻384ページ