逆転層

 

(ぎゃくてんそう)

【自然】

対流圏の大気温度は、高度が増すにつれて気圧が下がるように気温も低下する(-0.5℃/100m)が、逆転層は上層よりも下層の気温が低くなる現象である。逆転層は、上層逆転と下層逆転に分類され、下層逆転は日照時間の少ない季節において、地表面の受熱量が放熱量を下回り、冷え込んだ地表面に接した空気が冷やされて空気密度が増し、重力の方向に流れ出して停滞する接地逆転現象である。上層逆転は、前線性逆転と沈降性逆転があり、温帯低気圧の通過に伴う温暖前線、および寒冷前線内で起こる現象である。温暖前線は寒気の上に暖気が緩やかに這い上がっていくため、低気圧の中心から離れたところに鱗雲や羊雲、およびいわし雲がみられ、低気圧の接近を知らせるが、寒冷前線は暖気に寒気が楔状に逆転層を形成していて、積乱雲が発達して強い雨をもたらすことが多い。これに対し、沈降性逆転は、高気圧からの下降気流が地表面の平均高度(約1500m)で水平方向に広がり、下層よりも気温の高い層が形成されるもので、人間活動に伴う排出ガス、および熱エネルギーの移流・拡散を抑える現象である。このため、大気環境濃度が悪化し、航空機で高度1500m付近から急激に青空が広がるのは、沈降性の上層逆転層の上に出た証拠である。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻146ページ