(きゅうしもやまゆうびんきょく)
【建築】
大沼町(下山地区)。当郵便局は明治7(1874)年6月10日に大沼郵便役所として始まり、この建物は昭和6(1931)年12月11日に建築され、昭和46年に新局舎が完成した後に閉鎖された。建物は北側の足助と下山を結ぶ県道に面して建ち、細長い敷地内に、事務室棟と和室棟が建つ。規模は、1階は間口4間半、奥行9間、2階は間口4間半、奥行2間の木造瓦葺、人造石塗仕上げの建物である。正面の外観は、大きな4本のピラスター、アーキトレーブ、コニースと単純な直線を繰り返し、左右対称形のアール・デコ風の建物である。屋根は2階部分を片流れの桟瓦葺、平屋部分は切妻の桟瓦葺としている。外壁は郵便局部分を人造洗出し塗仕上げ、開口部は正面中央を両開戸、左右は片開戸、窓は上げ下げ窓を基本とし、一部は引違い窓となっている。和室部分の外壁は羽目板張り、窓はすべて引違い窓になっている。平面は、事務室棟に和室棟が付属する形式である。事務室棟は郵便事務部分の北側正面入口部分の1間半を土間の受付とし、左側に1間半四方の応接室、右端には半間四方の電話室、受付と事務室境はカウンターを介し、床を一段高くし、間口4間半、奥行2間半の20畳の板間を事務室としている。事務室の東側に2階への急な階段があり、受付の土間の上部に2階があり、L字に半間の廊下が廻り間口2間、奥行1間半の6畳の和室が北側の県道に沿って2室並ぶ。1階の事務室の奥に幅1間の中廊下の左右に8畳間と6畳間が並ぶ。その奥には4畳間と別棟の8畳の座敷が続く。この郵便局は洋風の事務室棟と和室棟からなり、昭和初期の郵政建築の様式をよく残した建物であったが解体された。
『新修豊田市史』関係箇所:22巻465ページ