クス

 

(クス)

【自然】

クスノキ科の常緑樹で、巨木になる。一本で森の様相を呈するため、大分県では「湯蓋の森」(応神天皇伝説)など「森」を付けた名称表現をとる。市内では坂上町立神明社の300年超、亀首町の500年超、挙母町挙母神社650年超(市指定天然記念物、写真)、寺部八幡宮の800年超の個体が樹齢面でも卓越し、地域を代表する巨木である。巨樹になるため寺社境内に多いが、元来、本種は生命力の象徴として尊重されてきたため、「祈りの場」で保護・育成されてきたといえよう。仏教伝来とともに国内に持ち込まれた白檀にかわる「国産の香木」評価を受け、珍重されてきた。飛鳥時代までは仏像用材として利用されたが、藤原時代にはクスノキ適材の減少に伴い、ヒノキに取って代わられた。古代には「浮宝(うくたから)」(『日本書紀』巻1)、すなわち船用材として用いられた。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻366ページ