警固祭り

 

(けいごまつり)

【民俗】〈祭礼・芸能〉

氏神の祭礼に際し、火縄銃の鉄砲隊と棒の手隊で守られた飾り馬を奉納する祭礼習俗。市域では、有名社寺の祭礼に際し、多くのムラが合同で飾り馬を出すことがあり、こうした習俗を合属と称していた。とりわけ猿投神社祭礼に対する猿投合属は盛大で、飾り馬を警固する鉄砲隊や棒の手隊が付属していた。合属の際にはムラ同士の喧嘩が絶えず、ムラのシンボルとして飾り馬に装着していた標具を奪い合ったりしたことから、よそムラの仕打ちから自分のムラの馬を守るために加わったのが本来の警固である。現在、猿投合属は衰退してしまったが、かつて猿投合属に参加していた地域などでは、その有様を簡素化してムラの祭りに再現するようになり、警固祭りと呼ばれている。市域では、氏神の祭りに飾り馬を出すところは多いが、現在、警固祭りを行っているのは、猿投地区の四郷、藤岡地区の迫、北一色(写真)、飯野、御作、木瀬などである。また、宮口(挙母地区)などのように馬の姿はみられないものの、警固行列が出て祭礼行事を繰り広げるところもある。これらの地区の警固祭りは、10月の氏神祭礼で行われ、飾り馬を中心に鉄砲隊、棒の手隊が行列を組み、地域内を巡った後、氏神に向かう。途中、決められた場所で火縄銃を発砲し、棒の手の演技を披露する。神社前では馬を駈けさせたりするが、それを「追い立て」と呼び、警固祭りの見どころになっている。警固の行列が神社入口に到着すると、祭りの代表が地に手をついて口上を述べ、宮入りの許しを得た後、神社境内へ入る。宮入りの儀式は、合属時の作法が形を変えて残されたものである。警固祭りは、規模は縮小されているとはいえ、かつての合属の様子を彷彿とさせるものである。警固祭りは男子のみの祭りであったが、近年では木瀬のように女子を法螺貝隊に参加させるなど、伝承のための模索が行われている。〈祭礼・芸能〉


『新修豊田市史』関係箇所:17巻338ページ

→ 飾り馬猿投合属