(けまん)
【美術・工芸】
仏殿の内陣の長押などに懸ける荘厳具で、その形状はおおよそ団扇形をしており、唐草文や蓮葉文を切り透かしたものが多い。華鬘は梵語で俱蘇摩摩羅(くすままら)といい、『一切経音義』(唐代に玄応が著した難解な仏典の字句の解説書)には俱蘇摩は花、摩羅は環、花輪、王冠、念珠、首飾りの意味とある。野の花を連ねて飾りを貴人にささげたものが、しだいに仏前に供えるものになったようで、華鬘を供養すれば諸尊が歓喜するとの功徳を説くものや、比丘はこれをつけることを許されず、仏の供養に用いよとした教説もある。はじまりは供養具であったものが、しだいに荘厳具に替わったものといえる。団扇形をした外形の上部に懸垂するための環があり、生花を連ねて作った伝統を踏襲して、紐の残りを中央で総角(揚巻)結びをして飾るのが通例である。華鬘の材料は、隣松寺(幸町)の華鬘がそうであるように銅製が最も多く、他には皮革製や木製、珠玉製などがある。
『新修豊田市史』関係箇所:21巻407ページ
→ 隣松寺華鬘