(ごううさいがい)
【自然】
豪雨災害とは、想定される降雨量を上回る降水によって引き起こされる災書で、山間部や丘陵地では山崩れやがけ崩れによる土砂災害、沖積平野では河川の氾濫による洪水被害であるが、洪積台地でも住宅地の盛り土による土砂災害が発生する。特に、河川上流での開発に伴う表面流出量の増加は、急激に下流域の水位が上昇して避難が遅れるなどの被害が相次ぐようになった。豪雨の原因となるのが積乱雲の急激な発達によるものであるが、マサ土の多い市域では土砂災害が発生しやすいことが報告されている。近年の時間雨量が100mmを上回る集中的な豪雨は、地球温暖化と密接な関係があり、西太平洋の海面温度が上昇するラニーニャの影響も見逃せない。これは、ハドレー循環の強化によって中緯度高圧帯の勢力が増し、北半球の北東貿易風と南半球の南東貿易風が赤道付近で収束して熱帯海域の海面を西太平洋側に押し付けるからである。海洋上では熱帯内収束帯(Intertropical Convergence Zone)は1つであるが、大陸上では北熱帯内収束(NITC)と南熱帯内収束(SITC)に分離する。SITCは南半球から南東貿易風が赤道を越えて向きを変えたものであるが、NITCは赤道を越えてきた南半球からの南西の暖湿流と大陸の乾燥大気(揚子江気団)との接点にあたるため、三次元的にも高さが高く大気擾乱が著しい。日本列島の梅雨前線は、北太平洋高気圧とオホーツク海高気圧によるシトシト型の東日本型前線 と、ベンガル湾からの南西風と乾燥した揚子江気団との間に形成される集中豪雨が発生しやすい西日本型前線とに分けられるが、中部地方はこれまでの東日本型から西日本型に変わりつつあるのが現状である。このため、東海地方は西日本型の秋雨前線地域であると同時にベンガル湾からの南西貿易風と太平洋高気圧からの南東貿易風の収束によって線状降水帯が形成されやすく、伊勢湾の逆V字型の湾から積乱雲が進入しやすい地域であると同時に、三河山間部はこれらの積乱雲が山地地形でさらに発達しやすい地域といえよう。東海豪雨による矢作川の氾濫はこれらの悪条件が重なったものである。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻181・186・650ページ