(こくしょどき)
【考古】
ヘラ状工具を使って主に焼成前の土器に文字を刻む行為を刻書、それが施された土器を刻書土器という。須恵器などの内外面に線状の記号が刻まれたものはヘラ記号または窯印と呼ばれ、刻書とは区別される。例えば、高橋遺跡の土坑から出土した8世紀後葉の須恵器杯の底部外面には「谷部」(写真上)とある。これは生産地である須恵器窯において刻書されたもので、地名か氏族名とみられるが、刻書の目的を明らかにすることは容易ではない。一方、挙母地区太平町の七曲1号窯跡から出土した甕の頸部には「調」と「勘」(写真下)がそれぞれ異なる筆致で刻書されており、貢納に関わる生産管理の痕跡である可能性が指摘されている。
『新修豊田市史』関係箇所:2巻99・112ページ、6巻395ページ、20巻16・338ページ