(こすいのじゅんかん)
【自然】
湖水の流れは、風・河川水の流入・流出、水の密度差などで生じ、湖流・波といった基本的な流動があり、湖内の熱や物質の移動、拡散を支配する物理的要素である。また、その水域内で起こる各種の化学的・生物的過程にも密接に関連する基本的な環境因子である。湖水の流動は、水平的な流れと垂直的な流れ(鉛直流とも呼ばれる)に大別され、湖水の循環・停滞は、湖の密度勾配から算出される安定度と密接に関連している。安定度は、鉛直方向の密度勾配によって定義され、淡水湖において水の密度が水温のみの関数であるとみなして差し支えないことから、湖水の鉛直循環は、水温の年変化から説明され、表面水温の最大密度となる水温4℃が基準とされる。水は、4℃で最大密度となる独特な温度-密度関係がある。深水層の水温は、年間通じて最大密度となる水温であり、4℃に近い水温であることが多い。表層の水温の変化によって全層にわたり等温となる時期には鉛直方向の密度勾配が小さくなる結果、表水層の冷却に伴って生じる対流などによって湖水の混合が生じ循環期の様相を呈する。すなわち、夏季の表水層では湖水は良く混合しており、夏季から秋季にかけて表水層がその厚みを増す形で、鉛直的に湖水が混合される状況が生じる。また、湖沼への流入水・流出水は、勢いのある流れをつくり、近くの湖水の流れに影響する。例えば、融雪水や洪水後の濁流、また多くの汽水湖(淡水と海水が混合している水域)では、流入水の水温や溶存成分が湖水と異なるため密度の差が生じる。そのため、流入水の密度が湖水より小さい場合は表水層に流入し、大きい場合は下層に流入する。湖では,定常的な流動が認められにくく、特に深水層では極めて微弱であることが多い。市内の溜池などの水域での水温の鉛直分布の周年変化は、夏季に水温成層が正列、冬季に逆列になり、夏季および冬季に停滞期・部分循環期や春季および秋季の全循環期のように区分される。すなわち、表面水温が年最高値は4℃以上、最低値は4℃未満となり、全層4℃となる春季と秋季に年2回循環(2回循環湖)する、温帯湖と定義される。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻295ページ