五平餅

 

(ごへいもち)

【民俗】〈食生活〉

五平餅は、粳米を炊いて半ば潰したものを、幅広の串に小判型につけて焼き、たれをつけてさらに炙ったものである。市域山間部では、五平餅は「お客さんに出すいちばんのごちそう」というほど重要な食べ物であった。特に山の講の時に作られたが、その他にも盆、正月、祭りなど、人が集まる時に作った。五平餅は白米のみで作るため、「米だけの飯が食べられる」と楽しみにしていたものだった。形状や大きさには地域によって違いがあり、たれの工夫も家によってさまざまであった。小原地区の五平餅は小判型ではなく、丸型を二つ串に刺した形が多い。串も細いものを使い、市場では壊れた番傘の骨を使ったという。旭地区・足助地区・下山地区では「五合五平」などといい、大きな五平餅が作られていた。1本に5合もの飯を使った五平餅という意味で、串を足で挟んで立て、両手で飯をくっつけて作った。現在は型を使うことも多いが、かつては握って串につけていったものという。五平餅は焼いているうちに、飯が串から離れて落ちてしまうことがある。串が濡れていると落ちやすいといい、よく干しておいて使った。飯が柔らかいと落ちやすい、握って串につける時、手に水をつけすぎると落ちやすい、などともいわれる。炭窯を築いた時は五平餅を作って祝ったが、この時の五平餅が落ちると、炭窯の天井が落ちるといって嫌われた。五平餅を焼く時は、イロリの真ん中に鉄の棒をわたし、両側から交互に五平餅を立てかけた。五平餅はミソ(たれ)の味が重要とされる。醤油味と味噌味があり、各家庭ごとの工夫があった。昔から五平餅のたれを作る時は、みりんや酒をふんだんに使った。白米のみを使うこととあわせて、五平餅がご馳走であったことの表れといえる。〈食生活〉


『新修豊田市史』関係箇所:15巻343ページ