衣里    

 

(ころものさと)

【古代・中世】

鴨評・賀茂郡のサト名で平安時代の歌枕。初見は『経衡集』で、藤原経衡の「ほとちかく ころものさとは なりぬらん ふたむらやまを こえてきつれは」というおおよそ11世紀後半の歌があり、その詞書にも「ころものさと」とある。『夫木和歌抄』の巻七・巻三十一に「為忠朝臣家三川国名所歌合、衣里」として藤原忠隆・平為盛・意尊法師が「衣のさと」を詠んでいる。中世の『歌枕名寄』には「参河国謌」の「二村山」の項、また「宮地山」項の下に「衣ノ里」が詠まれ、「衣里」項などに経衡の歌が再録されている。ほかに源具氏・橘(鷹司院按察か)の「衣ノ里」「衣のさと」を詠んだ歌もある。都の歌人たちにはよく知られており、春の花が咲き乱れる様子を衣にかけて詠まれ、コロモは衣類を思い起こさせ、それが春の季語的な枕詞として使用されたのである。

『新修豊田市史』関係箇所:2巻177ページ

→ 『歌枕名寄』『夫木和歌抄』