盃ごと

 

(さかずきごと)

【民俗】〈人の一生〉

三三九度の盃ごとは婚姻成立儀礼の中心のように思われているが、小笠原流礼法の影響で広まった新しいしきたりである。市域では公開する場合と内々で行う場合があり、中には夫婦盃を欠く事例もみられる。桝塚東(上郷地区)では、夫婦盃、親子盃をベツヤや離れで仲人が立ち会って内々に行った後、ザシキの仏壇の前で花嫁と親戚との親戚盃を行った。新郎はこの場にはおらず、小さい男の子、女の子を酒を注ぐオチョウ・メチョウに頼んで盃を流し、下座には盃を干す際にスルメを摘んで「オサカナコレニー」と声をかける人がいた。下和会(上郷地区)でも、婚礼の客全員の盃ごとはオチョウ・メチョウや「オサカナコレニー」を伴ったが、夫婦盃と親子盃は非公開で、宴の途中、仲人の立会いで奥の部屋で行った。花園や駒場(高岡地区)では親戚盃のみで夫婦盃がなく、自分の席のない花婿は暇なので「ヨアソビに行った人もいた」といわれる。〈人の一生〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻593ページ、16巻540ページ