坂参り

 

(さかまいり)

【民俗】〈人の一生〉

市域では、生後33日の宮参りの際、母親はまだ完全に産のケガレから解放されていないため、神前に行けずに鳥居のところで参ったというところが多い。これを坂参りと称した。宮口上(挙母地区)や篠原(保見地区)、野見(高橋地区)などでは、生児は姑が抱いて宮参りをし、母親は酒と塩を鳥居にかけて帰ってきた。本地新田(挙母地区)では、生児も鳥居をくぐることができなかった。神前に坂がなくても、鳥居前から参拝することを坂参りと呼んでおり、本来は宮参りとは別の儀礼であったと考えられる。折平(藤岡地区)など山間地域では辻参りといって、生後33日目に母親が生児を抱いて四つ辻や三つ辻を回るしきたりがあり、この後に神前に行くことが許された。坂も辻も境を象徴するものであり、ケガレを帯びた状態からケガレのない状態に移行する際、こうした場所を越える儀礼が必要とされたのであり、坂参りは生児の初外出儀礼と位置付けられる。〈人の一生〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻629ページ、16巻570ページ