(さとやま)
【民俗】〈環境〉
人々の居住域に近く、山の恵みを薪炭や肥料、飼料、屋根材などとして利用するため、頻繁に人の手が入ることで生態系に恒常的な人による影響が見られる山。里山は集落と奥山の中間に位置し、屋敷、集落と前面の川や背後の山など、多様な土地の利用と管理が行われてきたところである。市域では屋敷裏の山の峰までをウラヤマ(裏山)、セドヤマ(背戸山)、ノキヤマ(軒山)などと呼んで利用してきた。小原地区や藤岡地区では、里山の樹種はカナギと呼ばれた雑木で、割木にして瀬戸の窯業燃料として売るため、20年に一度のペースで伐採されてきた。荒地となった山には陽樹であるアカマツが最初に生えたが、火持ちのよいアカマツは次回の伐採では窯屋の燃料として高値で売ることができた。また、松葉はゴと呼ばれ、焚き付けの燃料として採取されたためアカマツ林の地表面は見通しがよく、マツタケがよく出た。これも里山での貴重な現金収入源となっていた。カナギを定期的に伐採することで草地が形成され、屋根材や肥料、飼料を取るカヤ山として利用されてきたところも多い。里山の森林は人によって定期的に伐採されるため極相まで遷移することがなく、さまざまな遷移段階の樹相が展開する。この結果、多様な生物の生育環境が用意され、生物多様性が保持されてきた。しかし、高度経済成長期以降、里山の草木を薪炭や肥料として利用することがなくなり、山の手入れがされなくなったことで里山の荒廃が進んでいる。〈環境〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻15・34ページ