(さなげじんじゃじょうじさんねんぼくしょめいかたなびつ)
【美術・工芸】
猿投町の猿投神社に伝世する刀櫃(全形、縦147.5cm、横34.0cm、高さ47.0cm)で、材は杉の白木を用い、覆蓋造の唐櫃で蓋と底は一枚板を用いている。身の各面中央に付けられた4脚のうち横面の1脚が欠損している。紐金物はなく、足の上部に紐通しの孔が開けられている。蓋裏と身底に墨書があり、貞治3(1364)年4月の上葺のついでに西方(高橋荘西方。現豊田市中心部)小所(不詳)の住人で大工権守源重光が作った半行御社、すなわち猿投本社の「御釼篋」であることがわかる。その製作年代が明らかな刀櫃としては他に類品が知られず、管見では広島県の厳島神社の古神宝(国宝)中に国司佐伯景弘が調進した寿永2(1183)年紀のある朱漆塗覆蓋造の飾り劔箱や、奈良県春日大社の菱作打刀(国宝)に附属する杉箱に至徳2(1385)年の奉納墨書が知られる程度で、その作りは簡素ながらも、おそらくは全国的にも古いものの一つとみられ貴重である。
『新修豊田市史』関係箇所:21巻381ページ