(さなげじんじゃのしゃそう)
【自然】
猿投神社は、市域西北部の猿投山(標高629.0m)の麓に鎮座し、本社、山頂下の東の宮、西の宮により構成されるが、社叢林を考える際には、この3社境内林に限定せずに、猿投山全体を考慮した方がよい。猿投山と神社は、不可分の関係にあるといってよいからである。近世の頃までは猿投山、猿投山三社大明神などと呼ばれていたことを考慮すれば、社殿背後の猿投山が神体山として崇められていたといってよい。市域全体の植生概観からもいえるが、猿投神社、猿投山の植生は、北方系、西日本系、東日本系、日本海側、襲速紀(ソハヤキ 熊襲、豊予海峡・速吸瀬戸、紀州から命名)、中国大陸系各要素の混在する様相がみられる。特に日本海側から南下したと考えられるシロバナタニウツギ、襲速紀要素のカイナンサラサドウダン、東日本系のトウゴクミツバツツジと西日本系のコバノミツバツツジ、ダイセンミツバツツジの混生など、この地ならではの特徴がみられる。範囲を境内林に限定しても、社殿裏、東海自然歩道西側には、スギ、ヒノキの大木に混じって暖帯性常緑広葉樹林が形成され、鎮守の杜にふさわしい植生景観がみられる。特に古来「神宿る木」として崇められてきたスダジイの高木が生育していることは、興味深い社叢林構成である。さらに東の宮への道路沿いには、「ツガの林」があり深山植生の趣を示し、さらに参道沿いにスギ大木が主木として立ち並び、ヒノキ、モチノキ、サカキなどと混交林を形成し、荘厳さを醸し出している。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻360・364ページ