産業集積

 

(さんぎょうしゅうせき)

【現代】

特定の地理的範囲に工場などの企業の事業所や公的研究機関などの関連諸組織が集中して立地していること。ここでの集積とは、経済地理学の中核を成す概念の一つであり、経済活動の空間的集中を示す際に用いられる用語である。ただし、狭義の集積とは、相互に近接して立地する複数の生産者が相互に結びつき空間的に相対的なまとまりを呈するとともに、ある特徴を有する局地的な労働市場と結びついて、各生産者が何らかの利益を享受する現象である。豊田市とその周辺の自動車工業地域のように、集積に伴って生産者間の分業が促進されることで経費の削減が生じたり、分業で結びついて近接した生産者間での輸送費用や取引の際のさまざまな費用の節減が生じたりすることになる。また、同業者が限定された空間的範囲に集まれば、事業所間で共通に活用される補助的な産業を生成するばかりでなく、その産業に適合した労働力が再生産されるようになり、集積内で活動する事業者や労働者に共通した価値規範ないし文化性が育まれていくことになる。こうした集積が産業集積として認識されており、局地化の経済、あるいはクラスターとも呼ばれている。

『新修豊田市史』関係箇所:5巻297・304・469・ 603・752ページ