サンショウウオ

 

(サンショウウオ)

【自然】

イモリ科などを除く有尾目の総称。市域には止水産卵性のヤマトサンショウウオとミカワサンショウウオ、および流水産卵性のハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオ(写真上)、ヒガシヒダサンショウウオの5種が知られており、すべて日本固有種でサンショウウオ科に属する。市域のヤマトサンショウウオは、かつてトウキョウサンショウウオないしカスミサンショウウオと呼ばれていたもので、渥美半島集団と並び、この種の東限にあたる集団である。湧水のある浅い水場に産卵し、かつては市域でも平野部から丘陵地の湿地や水田に広く生息していたと考えられるが、猿投地区や石野地区で知られていた集団はすでに消滅しており、最近の記録は藤岡地区の1地点に限られる。この集団はごく小規模で、遺伝的な多様度の低下も著しく、消滅の危機にある。県の絶滅危惧IB類。ミカワサンショウウオ(写真下)は平成29(2017)年に記載された新しい種で、三河地方の固有種。詳細な分布情報は公表されていないが、市域では10数か所で産卵が確認されている。河川源流部湿地の泥中に沈んだ枝や杉の葉などに産卵し、変態後は周辺の林床で成長すると考えられる。土地の造成による環境改変のほか、アライグマによる捕食も懸念される。県の絶滅危惧IA類、指定希少野生動植物種。ハコネサンショウウオおよびヒガシヒダサンショウウオは山地渓流で繁殖する種で、市東部の下山、足助、稲武地区に生息する。幼生は流水中に生息し、かつては薬用に食された。足助地区ではヒガシヒダサンショウウオの幼生を「ハチロベー」、ハコネサンショウウオの幼生を「アンコ」、「キアンコ(特に背面が黄色のもの)」と呼び分けていた。ヒガシヒダサンショウウオは渓流中の岩の下などに産卵し、しばしば卵嚢を観察できるが、ハコネサンショウウオは岩盤の奥深くで産卵するため、卵嚢を見かける機会は稀で、市域では稲武地区での古い記録が1例あるのみ。いずれも県の準絶滅危惧種。残る1種はヒダサンショウウオで、豊田市内では小原地区大ケ蔵連町にのみ知られている。市史自然編ではこの集団と市東部に生息するヒガシヒダサンショウウオを合わせてヒダサンショウウオとして扱ったが、その後この種は2種に分割され、それに従えば、市内ではこの集団のみが真のヒダサンショウウオとなる。生活史はヒガシヒダサンショウウオとそれほど違わないものと推測される。県の絶滅危惧IB類。


『新修豊田市史』関係箇所:23巻532ページ