蚕霊塔

 

(さんれいとう)

【近代】

市内には近代の農村経済を支えた養蚕業に関連する蚕霊塔が現存している。蚕霊塔は西加茂郡小原村に明治30(1897)年に建立されたのを最初に、市内では21基が猿投・小原・保見・石野・旭・下山の各地区で調査によって確認されている。刻字されている文字は「蚕霊供養塔」「蚕霊神」「養蚕大祖神」「蚕霊尊天」「養蚕神」「蚕霊大神」「蚕霊塔」など多様である。主に養蚕業が発展しつつあった明治後期から昭和10年代にかけて、村や養蚕組合が建立した。西加茂郡猿投村の上原国宝社など養蚕経営合理化組合が、昭和10(1935)年10月に村役場の構内に建立した蚕霊塔(写真)は、養蚕の歴史と蚕を神として祀った先人の功徳に感謝する内容の文章が碑裏面に刻まれている(撰文は早稲田大学教授近藤潤治郎)。また同年10月にも挙母町の千足川端養蚕実行組合が蚕霊碑の除幕式を行ったとの新聞報道がある。実行組合は昭和7年県の認可を得て、稚蚕共同飼育場を設け、成功を収めたため、この蚕霊碑を建立した。


『新修豊田市史』関係箇所:12巻637・661・851ページ