(シオカラトンボ)
【自然】
市域すべての地区から記録があり、最も普通に産する1種である。また、成虫は春に早く発生し秋遅くまでみられるため非常になじみ深いトンボでもある。メスが黄土色をしているため、特にムギワラトンボともいう。幼虫は池沼のほか、せせらぎや小河川、人工的な水域でもみられるため、環境変化にも適応できる種で、1年で2世代発生すると考えられる。オスの成虫が小枝の先や開けた所の葉上に止まって大きな目をきょろきょろしているのは、縄張りを占有しているためで、その縄張り下でメスは交尾、産卵し、その間オスが守っていると考えられている。トンボのオスの多くは、交尾時に前にそのメスと交尾したオスの精子が産卵時に受精に与あずかるのを防ぐ操作を行うことが知られているが、シオカラトンボは以前に交尾したオスの精子を奥に追いやって受精しにくくしている。「普通の虫」ではあるが、人の暮らしと密接に関わってきたことを、もっと重視すべきである。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻498ページ