シダ植物係数

 

(シダしょくぶつけいすう)

【自然】

生物は一般に水域、陸域に渡って多様な生育・生息空間を必要とし、それに適応しつつ生物種ごとに生態的位置を形成していく。動物と異なり短期間で移動できない植物は、特に生育する環境を示す指標となり得る。例示するとシダ植物の一種ヘビノネゴザは、銅、亜鉛、カドミウム、鉛の吸収度が国内800種のシダ類のうち最大で、それを利用して鉱脈探索や地質調査の指標種として扱われる。おいしいミカンは玄武岩と、ワインはジュラ紀層、白亜紀層と関係することも知られている。日本酒向きの宮水は、花崗岩地帯が適し、東海丘陵要素のヒトツバタゴ自生地環境と符合する。このような環境と植物との関係を考慮して、特殊植物が示す環境を評価する際、コケ類、地衣類、シダ類など空中湿度が高く、基岩に含まれる水分も多い環境を好む植物種は有効な指標となる。市内にみられる着生シダ類には、サジラン、ヒメサジラン、オシャゴジデンダ、クラガリシダ、マメヅタ、クモノスシダ、ビロウドシダ、カラクサシダ、イワオモダカ、オオクボシダ、イワデンダなどがあり、中でもクモノスシダは市内旭町小渡に生育し、花崗閃緑岩に着生する特有の環境適応性を示す例である。シダ植物係数は、種子植物との比から算出された数値で、温暖多湿な大気環境、着生基岩の水分量のレベルを示すもので、値が高いほど温暖多湿な環境であるといえる。市内では、足助3.7、旭・猿投山2.6、旧豊田市2.1、茶臼山1.5で、各地の気候区分に一致する。本州平均は2.1、九州・四国平均は3.1である。足助の気候特性はきわめて特徴があることがわかろう。


『新修豊田市史』関係箇所:23巻366ページ