(しぼり)
【民俗】〈諸職〉
生地を糸で括って防染し、さまざまな図案、意匠を表した染色技法とその製品。図案・型紙の作成、青花(ツユクサ)による下絵刷り(下絵付け)、絞り加工(括り)、染色、糸抜きなどの工程を経て反物に仕上げた。愛知県では「有松鳴海絞り」が知られ、その生産は絞商が差配した。各工程は分業で行われ、取次職(影師)が絞商と各業者の間を取り持った。高岡地区や上郷地区では、昭和30年代頃まで、白生地を糸で括る絞り加工が農家の女性の内職で行われていた。技法は「鹿子絞り」が多く、絞り台というL字状の木製台に取り付けた鈎針を使い、生地に描かれた点描の一点を引っ掛けては糸で括っていった。括り作業をする人はシボリテ(絞り手)やシボリコ(絞り子)、イイコ(結い子)などと呼ばれ、絞商や取次職から絞り加工の仕事を請け負ったトリツギサン(取次さん)、ナカツギサン(中継ぎさん)が、農家を回って1枚いくらで仕事を発注していた。〈諸職〉
『新修豊田市史』関係箇所:16巻206ページ