シマヘビ

 

(シマヘビ)

【自然】

ナミヘビ科ナミヘビ属に属するヘビ。本州、四国、九州とその周辺の島々に生息する。日本本土のヘビの中では比較的大型で全長1.5mほどになる。茶褐色の地色に4本の黒い縦条を持ち、赤色の虹彩が特徴的である。時折全身真っ黒の黒化個体もみられ、そうした個体では虹彩も黒色となる。幼蛇は成体とまったく異なる赤褐色の横縞模様を持ち、「アズキヘビ」と呼ばれる。樹上でみかけることもあるが、基本的には地表性のヘビである。餌のレパートリーは広く、小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類など、脊椎動物全般を幅広く捕食する。かつては平野部から山地まで幅広く生息していた種で、現在でも愛知県下の丘陵地から山地にかけての地域には比較的よく残っているが、平野部では明らかに激減している。市域における過去の調査では、ヤマカガシほど多くはないものの普通種とされており、「ヤマカガシ3に対してシマヘビ1」と表現されているが、現在では両種ともほとんどみられず、市域の平野部でよくみかけるヘビはむしろアオダイショウ、ヒバカリ、ニホンマムシの3種である。ほ場整備の進んだ平野部の水田で、ヘビ類全体が減少していることは理解できるが、多様な餌を利用でき、一見適応力が高そうなシマヘビが激減し、哺乳類専食のアオダイショウや、魚類、両生類専食のヒバカリの方が生き残っている点は興味深い。とかく嫌われがちで無為に殺されることも多いヘビ類だが、へビ類の消滅は生態系の中間的な位置にある捕食者の減少を意味し、生態系全体の縮小を招きかねない重大事である。生態系保全の観点からは、市域のヘビをむやみに殺すことは避けたい。


『新修豊田市史』関係箇所:23巻549ページ