(じゅぞう)
【美術・工芸】
存命中の像主を描いた、肖像画または肖像彫刻を寿像と呼ぶ。これに対し像主没後に制作された肖像画または肖像彫刻を遺像と呼ぶ。東アジア世界では、ほんらい肖像画や肖像彫刻は像主に対する追慕や崇敬、あるいは歴史的教訓の主体として、没後の人物を表現することが一般的だった。そうした中で、存命中の人物を表現するものは特に「寿像」と呼ばれ、区別された。当初、在俗の人物を表現する寿像は忌避される傾向があったが、存命中の像主を描くことの多い似絵や頂相が中世に流行するなかで、徐々に忌避感は和らいでいった。市域では、長興寺(長興寺)の無為昭元像および太陽禅師像が、いずれも寿像としての頂相である。また、彫刻としては恩真寺(山中町)の鈴木正三和尚坐像がある。
『新修豊田市史』関係箇所:21巻44・218・230ページ