硝酸性窒素

 

(しょうさんせいちっそ)

【自然】

硝酸性窒素(ここでは、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を総称して「硝酸性窒素」ということとする。硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ)ともいう。)は、土壌や水、植物中のあらゆる自然界に存在する。硝酸性窒素は硝酸塩として含まれている窒素のことで、水中では主に硝酸イオンとして存在している。これは、肥料(窒素肥料:硫酸アンモニウムなどが代表的)、家畜のふん尿や生活排水に含まれるアンモニウムが酸化されたもので、過剰施肥などで作物に吸収されなかった分やふん尿の不適切な処理などにより、土壌から溶け出して富栄養化の原因となる。また、水に溶けやすく、土壌に保持されにくいため、地下水や河川水に溶け出しやすい性質となっている。飲み水に含まれていても、無味・無臭・無色であり気づくことはない。しかし、人が硝酸性窒素を多量に摂取した場合、一部が消化器内の微生物により還元されて、体内に亜硝酸態窒素として吸収され、血中でヘモグロビンと結合してメトヘモグロビンとなり、これは酸素運搬能力がないため、体内(血液中)の酸素供給が不十分となり、酸素欠乏状態となる(メトヘモグロビン血症)。水道水では、昭和53(1978)年に水質基準が設けられ、現在の基準は10 mg/L以下(硝酸性窒素の分解過程でできる亜硝酸性窒素を含む)となっている。平成11(1999)年には、地下水や、河川などの公共水域にも同じ値の環境基準が設けられ、豊田市内の地下水の大部分は環境基準内であるが、一部の地域で超過することも認められる。農作物は、吸収した硝酸性窒素からタンパク質やアミノ酸を生成するため健康には影響はほぼ無いとされている。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻259ページ