浄土宗の絵画

 

(じょうどしゅうのかいが)

【美術・工芸】

法然が開宗した浄土宗は鎌倉新仏教の一つで、念仏による阿弥陀浄土への往生を説く宗派である。その教義により、独尊、三尊、二十五菩薩を伴うものなどの阿弥陀来迎図や、山越阿弥陀図、善光寺阿弥陀如来像といった、阿弥陀如来の尊像画や、阿弥陀浄土を描く当麻曼荼羅をはじめとする観経変相図、阿弥陀浄土への道程を比喩的に表現した二河白道図がしばしば制作される。他に祖師像としては、宗祖である法然上人、法然上人による浄土宗開宗に強い影響を及ぼした中国の善導大師、善導大師を含む浄土信仰の祖師5人を描いた浄土五祖像など、説話図としては宗祖の一代記である法然上人絵伝、日本への阿弥陀信仰の伝来と発展を描く善光寺如来絵伝なども制作された。宗祖が浄土宗の出身であることから、真宗、時宗の仏画にも浄土宗と同主題のものがしばしばみられる。豊田市の浄土宗寺院は、その9割弱を鎮西派が占め、次いで西山深草派が1割ほどを占める。鎮西派は平野部の上郷地区、高橋地区、挙母地区、猿投地区に、西山深草派は山間部の足助地区、下山地区に、それぞれ集中する傾向がある。なかでも13世紀中葉以来の浄土宗寺院としての歴史を有する隣松寺(幸町)、松平氏菩提寺の高月院(松平町)、大樹寺開山の勢誉愚底の隠居寺として創建された春光院(岩倉町)、性源寺(広川町)にはみるべき仏画が多い。

『新修豊田市史』関係箇所:21巻178ページ

→ 善光寺如来当麻曼荼羅二河白道図法然絵伝法然像山越阿弥陀図来迎図隣松寺の仏教絵画