常福寺十一面観音菩薩立像

 

(じょうふくじじゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう)

【美術・工芸】

像高123.5cm、榧材一木造、内刳なし、彫眼、素地(彩色白土を残す)。寛文6(1666)年に再建された常福寺(槙本町)の厨子内に秘仏として安置される尊像で、大正6(1917)年まではおよそ33年ごと、それ以降は7年ごとに開帳が行われてきた。寛文6年の棟札によるとこの観音像は行基が刻んだ尊像とされ、八幡神の本地仏という解釈もみられる。髻上に頂上仏面、天冠台上に周一列に頭上面(10面)をあらわし、左手は屈臂して蓮華を挿す水瓶を執り、右手は掌を前に向けて垂下して、蓮華座上に立つ姿であらわされている。頂上仏面や頭上面、衣文表現など全体的に細かな造形は省略されているが、左右の裾幅に差を設けることで衣の動きを表現したり、脚に貼り付くような裙の表現には脚部の肉感表現への意識もうかがえる。また、側面観では腹部から大腿部にかけてたっぷりとした量感がみられる。頭上面には墨筆による素朴な顔が残るものがあり、当初は彫刻だけでなく彩色で細部の表現が補われていた可能性もある。制作年代は平安時代後期(11世紀頃)とみられる。県指定文化財。

『新修豊田市史』関係箇所:21巻114ページ

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