生物多様性

 

(せいぶつたようせい)

【自然】

生物多様性とは 生物多様性を考えるためには、次の3つのレベルを含まねばならない。①多くの生物種がみられる。「生物存在基盤としての種の多様性」②多くの生物がつながって生態系の豊かさやバランスが保たれている。「つながりと包括性を持つ生態系の多様性」③遺伝子の多様性が過去から現在、そして未来へとつながっている。「進化や種の分化を示す遺伝子の多様性」

生物多様性の機能 生物多様性がどのような機能を発揮しているかを、自然、人間、社会など多様な視点から評価すると次のようにいえよう。①生物の生存基盤をつくっている。「人間もその一翼にある」②有用性の源泉を形成している。「創薬など遺伝資源利用成果」③技術開発のヒントを与えてくれる。「生物の形態から得られるデザイン・バイオミミックス」④安全・安心の基礎を確保できる。「多様な生き物の生存と安定した環境との連関」⑤豊かな文化の源泉となる。「自然と人間が織りなす文化」

生物多様性4つの危機 ①人間による開発や乱獲。「再生・循環の切断」②外来生物などによる生態系の攪乱。「つながりの切断」③人手の後退と管理不足。「持続性の切断」④地球温暖化による影響。「可逆性の切断」

 このような要因により、現在は生物多様性が急速に低下している。地球上の生物は、過去5回にわたる絶滅期を迎えてきた。現在はその6回目に当たる危機である。しかし、過去5回と異なり、危機は人間活動に起因し、種の絶滅スピードは過去と比べて格段に速い。生物多様性の低下は、前述の多様性機能の喪失をもたらし、自然・経済・社会・文化全体のシステムを分断することにつながっていく。そこで国際的には生物多様性条約が締結され、次の3つの目的に向かい、各国が行動を起こすよう提起されている。①地球上の多様な生物を、その生息環境とともに保全すること。②生物資源を持続可能であるように利用すること。③遺伝資源の利用から生じる利益を、公正かつ衡平に配分すること。豊田市のように工業と農林業とが併存する地域では、多様性と包容性を基軸にする生物社会の保全を図ることが緊要な課題となる。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻306ページ