石冠

 

(せっかん)

【考古】

冠形や烏帽子のようなかたちに整形された石製品。縄文時代晩期を中心に後期・晩期に使用された祭祀具と考えられている。飛騨や北陸地域では、石棒状の突起を有するものなど種類や出土点数が多く、陰刻などによる装飾が施されたものもある。県内で発見される石冠は、底面が平坦気味で断面形状がカマボコ状あるいは三角形状をしたものと、楕円形の底面内側が著しく凹んでいてもう一端に向かって扁平に尖る形状のものが主で、多くは石棒・石刀類とともに発見されている。市域でも猿投地区神郷下遺跡や足助地区田町遺跡(写真:高さ9.2cm)、稲武地区のヒカゲ遺跡や所畑遺跡などで出土している。多くは丁寧に製作されたままの状態で発見されるが、中には一宮市馬見塚遺跡の事例のように表面に磨石・敲石類のような使用痕が認められるものもあって、祭祀行為の中で使用された様子をうかがわせている。また、額田郡幸田町東光寺遺跡では、土冠とか石冠状土製品と呼ばれる同じようなかたちをした土製品が出土している。


『新修豊田市史』関係箇所:1巻134ページ、18巻126・608・660・675ページ