善宿寺の仏教絵画

 

(ぜんしゅくじのぶっきょうかいが)

【古代・中世】

善宿寺は下林町に所在する真宗大谷派寺院。その歴史について詳細は不明であるが、蓮如に帰依して本願寺教団に参加し、戦乱による焼失・再興を経て現在に至るという由緒が伝えられる。いくつかの注目すべき仏教絵画史料を所蔵する。まず、室町時代の制作と推定されるものに山越阿弥陀図、文殊菩薩騎獅像、光明十字名号がある。いずれも中世の仏教絵画史料としての価値の高いものであるが、光明十字名号は墨書の「帰命盡十方无碍光如来」から光明を放ち、光明内に12体の化仏を描き配置するという特色のあるもので、主に初期真宗の北信越地域に展開した門流が用いた名号本尊とみられる。次に、注目すべき親鸞絵伝がある。裏書の写し、伝来記録によれば、天文10(1541)年に本願寺証如が伊勢長島願証寺に授けたものという。確かに当該期の作風が認められ、貴重な遺例である。その後、長島一向一揆の際に流出し、江戸時代に善宿寺の所蔵に帰したという。

『新修豊田市史』関係箇所:2巻354ページ、21巻208・210・212ページ

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