(ゼンバコ)
【民俗】〈食生活〉
ゼンバコ(膳箱)は木製の粗末な塗りの木箱で、銘々の茶碗、汁わん、小皿(オテショ)、箸、湯飲みを入れ、個人で管理した。使う時は蓋を裏返して箱に載せて膳とする。嫁入りの際に持参したという話者もいたが、多くは婚家で用意した。夫婦で大きめの膳箱1つを使い、2人分の食器を入れていたという例もある(鴛鴨・上郷地区)。小さい子どもは母親と一緒で、1人で食べられるようになれば膳箱を用意したが、小さいうちは子ども2人で1つという家もあった。食べ終わると、食器をお茶でゆすいできれいにし、そのまましまった。油を使うおかずがなかったので、それで充分だったという。3日~1週間に1回程度、主婦が家族の分をまとめて洗っていた。膳箱は食事をする部屋の隅に積み上げてあり、食事の際に各自で持ってきた。家によっては三本柱の木枠を作って積み重ねた。次第にちゃぶ台に取って代わられたが、遅い家では昭和20年代まで祖父母世代が使っていたという。〈食生活〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻299ページ、16巻292ページ