標具 

 

(だし)

【民俗】〈祭礼・芸能〉

三河および尾張地方で、祭礼の際に社寺へ献馬する飾り馬の鞍上に飾るもの。ダシの呼称は曳山の山車と共通する。標具は神馬や一つ物などを表現するものとして、それ自体が神の依り代的な存在だと考えられてきた。標具は造り物風流の1つとして派手に飾られ、祈願の際の献馬では、願いが成就すれば派手で豪華な標具に替えて礼参りを行った。標具は各村の象徴にもなり、有名社寺の祭礼に村が連合して飾り馬を献じる合属(合宿)の際には、標具の仕様に細かい取り決めがなされた。とりわけ市域が参加した猿投合属や、尾張の竜泉寺合宿では顕著であり、標具が旧例に従わない場合はもめ事に発展した。猿投合属の1つ米野木合属には、標具の間違いがないよう、所属する村々が提出した使用する標具の図面が残されている。合属では喧嘩の末に標具を奪い合うことも行われ、これを守るために警固が加わった。標具を取られると、以後は合属に参加できなかったという。〈祭礼・芸能〉

『新修豊田市史』関係箇所:17巻357ページ