竪穴式石室

 

(たてあなしきせきしつ)

【考古】

古墳時代前期~中期に盛行した古墳主体部の埋葬施設。石室の作り方を復元的にみると、まず古墳の墳頂部に長方形の穴(墓壙)を掘り、底に粘土又は礫を敷き、その上に棺を安置して四方に割石を積み上げて壁面を造る。その上に天井石を載せ粘土で覆って閉鎖した後、土で墓壙を埋め戻して墳丘を整える。棺と石積壁面との間が極めて狭いため、これを室ではなく棺を保護するための槨に相当するものとみて、竪穴式石槨と呼ぶべきとする見解もある。市域ではこれまでのところ竪穴式石室を埋葬施設とした古墳は確認されていない。なお、中期後半には、朝鮮半島から「渡来系竪穴式石室」と呼ばれる竪穴式石室が伝わったが、これは従来のものとは系統を異にし、幅広で長さが短い平面形を呈する特徴をもつ。この渡来系竪穴式石室の可能性が指摘されるのが高橋地区上野町にある神明社古墳(径27mの円墳または帆立貝式古墳、6世紀前葉築造)の石室(長さ2.9m・幅1.4m)である。

『新修豊田市史』関係箇所:1巻319ページ、19巻638ページ

→ 神明社古墳