谷底平野

 

(たにぞこへいや)

【自然】

河川が段丘や丘陵地、山地を刻む部分において、谷底にある程度の幅を持つ沖積低地がみられる場合があり、これを谷底平野と呼ぶ。Davis.W.Mの河食輪廻における河川の発達段階では、侵食が進んだ老年期の河川にみられる。断層破砕帯や軟層など侵食に弱い部分が侵食され局所的に川幅が広がる場合や、堰き止めによって上流側の河床が広がる場合など、さまざまな要因で形成される。谷底平野は沖積面であり、現在も河川の営力が及び増水時には河川が氾濫する範囲であるため、伝統的な土地利用は主に水田として活用されてきた。山間地では谷底平野ではなく氾濫のリスクが少ない低位段丘などが集落として多く利用されてきた。近年集落を通る道路の拡幅などが難しいことから、谷底平野に高規格のバイパス道路が建設されるなどし、これに伴い新しい店舗や住居、学校、行政機関なども谷底平野に立地することがある。しかし一度大雨が降ると、山間地では河川から溢れた水は谷底平野に集中し、短時間で一気に水位が上昇し、湛水深も大きくなることから、極めて危険な水害が発生することがある。平成16(2004)年7月に発生した福井豪雨水害では、足羽川上流の美山町(当時)において、谷底平野に立地していた役場、学校、消防署等が2m近く水没し、十分機能しなかった事例などもある。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻23・30・34・46ページ