(たのくさとり)
【民俗】〈農業〉
稲の生育のために除草は欠かせず、タノクサ、田の草取りと呼んだ。順にイチバングサ(一番草)、ニバングサと数え、最後の除草をアゲグサといった。雑草には藻の仲間、ナギ、ウリカワ、カヤツリグサ、ヒエ類などがあった。イチバングサは田植え後すぐに行い、田をかき混ぜて肥料を混ぜ込み、苗に酸素を供給して生育を促した。除草道具にはテマンガ(ガンヅメ)などを使い、大きくなったヒエなどはヒエキリで切った。のちに手押し式の除草具としてハッタンドリ(八反どり)も登場したが、細かな除草には向かなかったという。多くの人が、一年の農作業の中で田の草取りが一番辛かったと語っているが、昭和30~40年代になると農薬が普及して様変わりした。草を取る回数が減り、シロカキのときに目に付く雑草を手作業で除くだけで、あとは除草剤で済ますようになっていった。一方、農薬の普及によりバッタ、タニシ、ヒルなどを田でみなくなっていったという。〈農業〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻150ページ、16巻85ページ