(たんすいがい)
【自然】
水生軟体動物(貝類)のうち淡水域で生活するものを指す。淡水産貝類とも呼ばれ、一部には半陸性あるいは汽水性もあるが、海産貝類、汽水産貝類、陸産貝類に対比して用いられる分類用語である。河川、湖沼、溜池、湿地、水路に生息する。タニシ類、カワニナ類(写真上:チリメンカワニナ)などの腹足類(巻貝)とカワヒバリガイ、シジミ類、ドブガイ類などの斧足類(二枚貝)に分けられる。殻が5mmに満たないヒラマキガイ類やマメシジミ類などの微小種も含まれる。国内には100~150種程度が生息するとされており、市内からは30種近い淡水貝が発見されている。タニシ類やカワニナ類は卵胎生で仔貝を産み、モノアラガイ類やヨーロッパ原産のサカマキガイは、ゼラチン質に包まれた卵嚢塊を水草や岩礫に産み付ける。ヒラマキガイ科のヒラマキミズマイマイ(写真中)やヒラマキガイモドキは水生植物への付着生活をし、市内には本科の絶滅危惧種で湿地性のミズコハクガイも生息する。笠型の殻をもつカワコザラガイ(写真下)は水生植物や石の裏側に付着していることが多い。中国大陸や朝鮮半島原産のカワヒバリガイは、特定外来生物に指定されており、市内では平成16(2004)年頃から矢作川水系で確認されている。矢作川に流入する枝下用水では水路を埋め尽くし、平成18年にはブルドーザーでの撤去作業まで行われた。市内に生息するイシガイ科二枚貝はイシガイ、トンガリササノハガイ、タガイ、ヌマガイの4種が知られており、西部の平野部に分布している。これらはグロキディウム幼生を経て成貝になるが、その幼生はヨシノボリ類など魚類の鰓や鰭や口内に付着して、しばらくは寄生生活を行う。4種とも絶滅危惧種でタナゴ類(魚類)の産卵母貝としても重要である。また、殻の内面には真珠層が発達し、淡水真珠を作ることができる。さらには汚濁の原因となる有機懸濁物の濾過摂食による高い水質浄化能力ももっている。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻414ページ